日常の非日常 ge-cの頭ん中
1998年、 高校生の夏。 僕には物凄く好きな女の子がいた。 結婚したいと思っていた。
その子は、いつもがたいのいいちょっとブスな女の子と一緒に登下校していた。
真っ白なルーズソックスを履いて、スカートはちょい短め。
僕は駅から、高校までの道のりで、その子を見つけては、「いい脚してんなぁ」と後ろから眺めながら歩いていた。
2年生になってクラスが一緒になった。 しかもその子の席は僕のすぐ後ろだった。 どうにか話すキッカケはつくれないかなぁ。と思い、(よくある)消しゴムをわざと落として拾ってもらう。という作戦を立てて実行した。
初めて話したその子の声はとてもしゃがれていた。
思い切って、勇気を出して、熱海の花火大会に誘ってみた。
いきなり2人で行くのは、無理だったのかよく覚えてないけど、もうすでに付き合っていたノリカズ君とミキすんも誘って、4人で行くことになった。
ダブルデートというやつか。(ダブルデートってもう死語かな)
そういえば、
当時、僕の通っていた高校の女子の間では、
マキすんとか、マリすんとか、「すん」で呼ぶのが、
流行っていた。(どうでもいいけど)
伊豆っぱこに乗って、熱海の花火会場に向かった。
砂浜に座って、まだ花火まで時間があったので、
お弁当を買ってきて食べようということになった。
僕は、その子に
「一緒に行こう」と言った。
「やだ」と言われた。
その子の手を掴み、一緒に行こうと強く引っ張った。
すると、
「痛っ!痛い!痛〜い!」と叫んできた。
2、3秒の沈黙。
気まずい空気が流れた。
ちょっとぐらい強引なのが、「男らしさ」だと思っていた僕は見事に撃沈した。
結局、その子と付き合うことにはなった。
どんな風に告白したかは覚えていないけど。
僕の熱い想いをラブレターに書いた記憶はある。
思い出は、断片的には、覚えている。
初キスの味は、餡子の味がした。とか。
嵐の日にニケツをしたこと。とか。
その子の家に言って、お母さんがポークソテーを作ってくれたこと。とか。
僕の家に泊まったけど、母親が布団は別々にしたこと。とか。
初デートで大場駅からジョイランドまで、手を繋いで歩いて行ったんだけど、実はずっと勃起していたこと。とか。
ある先輩が、
人は仕事と恋愛からしか、学べない。
と言っていた。
当時、僕がその子から学んだことは、
「ごはんをどこに食べに行くかは、男が決めるってこと」だ。
「ごはん、何食べたい?」といつも訊いてきたことが嫌だったらしい。
「頼りない。もっとリードしてほしかった。」と言われた。
今となれば、とても恥ずかしいけど、それ以降、付き合った女の子は、「僕が」ごはんをどこで食べるか、決めることにした。
その子は当時、僕にこんなことを訊いてきた。
「もし2人でいて、悪い人たちに、絡まれたら、どうする?」
僕は「逃げずに殴られるよ」と正直に答えた。
「やっつけるよ。といって私を守ってほしかった」と言われた。
(今思えば、何だこの会話って感じ)
で、結局、1ヶ月でその子にふられた。
今では、お互い結婚して、その子も子供が2人いて、たまに僕がやっているお店に食べに来てくれる。
今となれば、あの時なんであんなに好きだったのか、理解できない。
でも、夏になると思い出す。
次の夏は、熱海に妻と子供と一緒に花火でも見に行ってみようかな。
(この話はだいたいフィクションです)