古本屋まるちゃんの人生卑猥っす!

前職の名残りで、僕はとある自治体関係の仕事をほぼ毎年手伝っている。
その仕事はミスが許されない(ミスをするとすぐにYahooニュースの記事になる)ので、会社が独自の事務局をつくり、その事務局の現役メンバーと、事務局経験者のOBたちが主な職務を担当する。

今年もなんとか無事にその仕事を終えることができたため、事務局現役メンバーと事務局OBさんでささやかな慰労会を開くことになった。
僕はその会社から離れていたものの、一応OBであるし、近況報告も兼ねてと幹事の方が特別に招待してくれたのだった。

久しぶりに会う先輩や上司の方も多く、お酒も料理も美味しく、何より皆さんの元気そうな顔が見られて良かった。
が、慰労会の内容自体はクソみたいなものだった。今からその理由を説明しようと思う。

幹事の方に招待してもらった時になんとなく想像してはいたのだが、大きな組織の飲み会というのは野良イヌも食わないほどの惨劇で成り立っている。
まず、その会には決まって権力の強い上司が一人、真ん中に鎮座している。そしてその権力のある上司の脇を部下たちが固め、皆競うように上司の機嫌を取ったり太鼓を叩いたり持ち上げたりする。

具体的にどんな話になるか。その権力のある上司の通っているジムでの最近の筋トレ状況、組織内での気に入らない野郎リスト、その上司の昔の武勇伝なんかが主だ。
ちなみに、どの話ももう10回以上は聞かされている。彼は全く同じ話をしてくるのだ。
しかしながら、その散々聞いた話を僕の先輩や上司たちはまるで初めて聞くみたいな感じで、「マジっすか!」「うわ~〇〇さんすげえ!」と爆笑したり深く頷いたりしているのだ。ねっ、クソでしょ?辞める前も辞めてからもずっと思ってたけど、あんな話まじでどうでもいい!

本当は、幹事の方に誘われた時に、即座にこの慰労会を断ろうかと思っていたのだ。
だけど離職した僕の近況報告も兼ねて、というその幹事の先輩の誘い文句と、もしかしたらもうそう言った飲み会はしてないのかもしれないという淡い期待(時代はもう令和だし)から返事を返した。そうした僕が完全に甘かった。

結論から言うと慰労会中、久しぶりにお会いした先輩や上司の方に近況報告をさせてもらう時間もなかったし、権力者である上司を讃えるあのお定まりの飲み会スタイルも見事なまでに変わっていなかった。

僕が組織を離れた理由の一つとして、酒の席でのあのクソどうしようもない身内同士の馴れ合いがある。と同時に、あの環境は極めて日本的であるなあと感動すら覚える。
なんとなく、テレビなどでよく見かけるひな壇番組に似てるよなあと思う。
大御所の芸人さんやタレントが、ひな壇に座っている下っぱ芸人やアホそうなモデルをいじり倒すアレだ。アレと同じことが、組織の飲み会でも頻繁に起きている。

個人的に思うのは、組織の中で権力を振りかざしてくる人間というのは決まって仕事ができない人が多い。
日本の年功序列制度と体育会系の気質、田舎特有のヤンキー文化をうまく利用してたまたまそのポジションを築いているに過ぎない。だけど、その権力を握った上司より明らかに優秀で仕事のできる、僕を慰労会に誘ってくれた先輩たちが競うように媚びへつらい、その上司の前でひな壇芸人のように率先して馬鹿を演じる。

僕は一人テレビを見ているような気分になり、優秀な先輩たちが無能な権力者を前に繰り広げる猿芸にほとほと悲しくなった。
僕が離職する前から何も変わっていない、明らかに合理性を欠いた状況が未だに広がっていたのだ。

組織、特に日本の会社という場所は、ただ仕事ができるだけでは出世できない不思議な環境であるように感じる。仕事をしていく中で、上で説明したような権力を持った上司たちにいかに気に入られるか。その上で自分の仕事をいかにやり易くしていくか。数十年も付き添っていかなければならない関係だ。

そうなってくると、飲みの席では早々と辞めたヤツの近況報告なんかよりも、そう言った権力のある上司への神輿担ぎの方がはるかに重要なのだろう。何十回と聞かされた上司の筋トレやクソどうでもいい武勇伝の方が大事なのだ。
そこで気に入られない人間は出世コースから外れ、それが出来ない人間は何十年と続く組織生活の中で苦渋の轡(くつわ)をあてがわれる。

それを我慢しながらこなせる先輩や上司は本当にすごいなあといつも感心する。義理や感情を是とする日本の行き過ぎた特異な文化。もはや病だ。

そのクソくだらない文化に、僕はこれからも堂々と中指を立て続けていきたいと強く思っている。

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